1年半くらいずっと好きだった人がいるのだけれど、忘れる努力をすることにした。
努力とまではいかなくとも、その人のために割いていたエネルギーとか時間とか、
いつの間にかその人好みの仕様になってた価値観だとかキャラだとか、
そういうのを、自分自身の既定値に戻していこうと思った。

何で好きだったのかは、今でもよく分からない。
ただ会えるのが楽しみで、連絡取り合うのが楽しくて、会いに来てくれるのが嬉しくて。
本当に理由は分からないけれど、いつの間にか夢中になっていた。

出会った時は同類の匂いを感じて、なんだか楽しいことが起こりそうな予感がした。
でもその人は、時間が経つにつれ、得体の知れない人物に変化していった。
たぶん同類と思い込んでいただけで、その人のことを全く見ていなかったんだろう。

次に会う約束はしている。
その次に会う約束もしている。
だからといって何があるわけでもない。
見慣れた風景に人物が1人加わり、そしてまた元に戻る。
日常の中のちょっとしたバグ。

なんで泣かなきゃいけないんだろう。
失うのが辛いと感じる。何ひとつ得てもいないのに。
何を分け与えたわけでもないのに。

いっそ、会いに来てくれなければいい。
彼女が出来たとでも言ってくれればいい。
忘れてくれたらいい。
途絶えてしまえばいい。

辛いから、私の方から離れていくことに決めた。
そんな宣言すら言い出せない、他人行儀な関係なのに。



辛い時、しんどい時、そっと、重くない程度に手を差し伸べてくれていた。
少しも互いの正体を晒し合っちゃいない、そんな遠いところから。
それがあたたかくて、その優しさが自分に向けられているのが嬉しくて。
お金も時間も思いやりも搾取するばかりで、気付いたら何も返せていなかった。

何をするにも、どうしても自分を第一に考えてしまう。
まずは自分が安全なところに立ってから、って。
でも保身の次は、居心地のよさを求めて。
その次は、快楽を求めて。
いつまで経っても、自分以外の誰かに分け与えることが出来ない。

どこかで転換しないと、たぶんずっと、優しい人間になれやしないんだと思う。
これを機にとは言わないけれど、最初は心がこもってなくてもいいから、何かを誰かのために投げだしていかなきゃいけない。
でないと、どんどんケチになる。


離れていこうと思ってたのに。
少しずつ頑張るから、だから、消えていかないでって思ってしまう。


たぶん、私はその人が、本当に好きなんだろう。

コメント