1人乗りの飛行機に乗るように
2009年10月22日 日常あれから2回会った。
今までのペースを考えると、2ヶ月間に3回も会えたのは奇跡に近い。
次に会える日は未定。
機体を翻して飛び去っていくあの人を見届け、
またしばらく単独飛行に戻る。
就職活動を控えた私たちの船団に、尊敬する先生の飛行機が近づいて、
高高度を飛ぶ船団に私を誘ってきた。
その景色はさぞ綺麗かろう。
太陽のほうへと飛び続ける、その空はさぞ寒かろう。
ただひと筋に、脇目をふらず。
燃料尽きて落ちていく機体を顧みることなく。
呼ぶ声のままに、ひたすらに飛び続ける。
先生の機体が私に並び、灯火の明滅を繰り返している。
船団の他の船は気付いていない。
上昇を始めた先生に導かれるように、操縦桿を引く。視界が開ける。
声が聞こえた。
遠い空から。
空よりもずっとずっと遠くから。
私の船を呼んでいる。
この機体は高度を上げたがっている。
遠く目を凝らす。
落ちていく船の尾翼に、あの人の模様を見た。
コクピットの動かぬ横顔に、あの人を見た。
機体からは煙すら出ていない。
硬直したプロペラ。
レーダーを確認する。
あの人の信号は遠くで穏やかに明滅していた。
ほっと息を吐く。少し白い。
空を見上げる。先生の機体の腹が船団に吸い込まれていく。
私は片翼をひるがえした。右に先生の船団が見える。
そのまま旋回して、遠ざかってしまった元の船団のほうへ進路を切った。
散開地点を前に、どのパイロットもしきりに計器を気にしている。
燃料、OK。
エンジン、異常なし。
冷却水、正常。
私は防寒服のファスナーを上げ、口までそこにうずめた。
ゴーグルをかけ直す。ベルトは大丈夫か?問題ない。
ちら、と先生の船団を見上げ、私は大きく舵を切った。
船団がほどける。
加速度に、身体がシートへ押し付けられる。
いくらかの船が、同じ方向へ行くようだった。
見慣れた尾翼の船もある。
それじゃあ僕たち、一緒に行こうよ。
でないとこの空は、あまりにさびしくて、広い。
同じ色の雲を引こう。
完全に平行な航路なんてありっこないけど、
僕らそれぞれが、次の船団を見つけるまでは。
あの人はどこを飛んでいるだろう。
呼ぶ声はとうに途絶えてしまったはずなのに。
まだ高高度を、喘ぎながら。
船団から取りこぼされて、一人。
迎えには行かない。
落ちていくあの人の機体を、キャノピィの向こうに眺めることになっても。
この空をずっとずっと飛んでいく。
ただ、あの入道雲を過ぎて、並進するあの人の機体が見えたなら、
喜んで航路を変えたっていい。
船団を作ろう。
私と、あなたで。
その景色は綺麗かろう。
二人で飛ぶ空は温かろう。
完全に平行な航路なんてありっこないけど、
同じ色の雲を引こう。
燃料、OK。
エンジン、異常なし。
冷却水、正常。
仲間の船と寄り添いあって、私はこの空を飛ぶ。
あの機体が視界に入るいつかを、ずっとずっと待っている。
今までのペースを考えると、2ヶ月間に3回も会えたのは奇跡に近い。
次に会える日は未定。
機体を翻して飛び去っていくあの人を見届け、
またしばらく単独飛行に戻る。
就職活動を控えた私たちの船団に、尊敬する先生の飛行機が近づいて、
高高度を飛ぶ船団に私を誘ってきた。
その景色はさぞ綺麗かろう。
太陽のほうへと飛び続ける、その空はさぞ寒かろう。
ただひと筋に、脇目をふらず。
燃料尽きて落ちていく機体を顧みることなく。
呼ぶ声のままに、ひたすらに飛び続ける。
先生の機体が私に並び、灯火の明滅を繰り返している。
船団の他の船は気付いていない。
上昇を始めた先生に導かれるように、操縦桿を引く。視界が開ける。
声が聞こえた。
遠い空から。
空よりもずっとずっと遠くから。
私の船を呼んでいる。
この機体は高度を上げたがっている。
遠く目を凝らす。
落ちていく船の尾翼に、あの人の模様を見た。
コクピットの動かぬ横顔に、あの人を見た。
機体からは煙すら出ていない。
硬直したプロペラ。
レーダーを確認する。
あの人の信号は遠くで穏やかに明滅していた。
ほっと息を吐く。少し白い。
空を見上げる。先生の機体の腹が船団に吸い込まれていく。
私は片翼をひるがえした。右に先生の船団が見える。
そのまま旋回して、遠ざかってしまった元の船団のほうへ進路を切った。
散開地点を前に、どのパイロットもしきりに計器を気にしている。
燃料、OK。
エンジン、異常なし。
冷却水、正常。
私は防寒服のファスナーを上げ、口までそこにうずめた。
ゴーグルをかけ直す。ベルトは大丈夫か?問題ない。
ちら、と先生の船団を見上げ、私は大きく舵を切った。
船団がほどける。
加速度に、身体がシートへ押し付けられる。
いくらかの船が、同じ方向へ行くようだった。
見慣れた尾翼の船もある。
それじゃあ僕たち、一緒に行こうよ。
でないとこの空は、あまりにさびしくて、広い。
同じ色の雲を引こう。
完全に平行な航路なんてありっこないけど、
僕らそれぞれが、次の船団を見つけるまでは。
あの人はどこを飛んでいるだろう。
呼ぶ声はとうに途絶えてしまったはずなのに。
まだ高高度を、喘ぎながら。
船団から取りこぼされて、一人。
迎えには行かない。
落ちていくあの人の機体を、キャノピィの向こうに眺めることになっても。
この空をずっとずっと飛んでいく。
ただ、あの入道雲を過ぎて、並進するあの人の機体が見えたなら、
喜んで航路を変えたっていい。
船団を作ろう。
私と、あなたで。
その景色は綺麗かろう。
二人で飛ぶ空は温かろう。
完全に平行な航路なんてありっこないけど、
同じ色の雲を引こう。
燃料、OK。
エンジン、異常なし。
冷却水、正常。
仲間の船と寄り添いあって、私はこの空を飛ぶ。
あの機体が視界に入るいつかを、ずっとずっと待っている。
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